2021/04/04
BOASとは聞き慣れない言葉だと思いますが、Brachycephalic Obstructive Airway Syndrome (BOAS)の略称で、小頭症性閉塞性気道症候群と訳されます。
これは何かといえば、パグやブルドッグまたエキゾチックなどといわれる猫種を好む愛猫家の間でも増えている鼻の潰れた品種が抱える先天的な器質的障害による病気です。
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デザインペットの苦しみ
有名人などが潰れた顔のペットと収まる写真が随所で見受けられます。しかし、当の動物たちからしてみれば楽しそうな飼い主たちとは裏腹に深刻な問題を抱えております。
大雑把に言ってしまうと2つの大きな問題があります。
- 呼吸が楽じゃない。
- 食事が上手くできない。
人の歪んだ嗜好性が、ペットが生きる上で致命的な欠陥を与えているわけです。
呼吸
これは簡単に考えてもらえば、本来ならば適度に長さのある真っ直ぐに伸びた鼻によって効率的に酸素が取り込まれるのが普通ですが、商業的な目的でそこを潰されました。
それによって先天的に浅い呼吸を強いられる為、極論すると喘息や狭心症が顔にあるような状態とでもいえるでしょう。運動能力が潰れていない顔のペットと比べるとどうしても低いのは息が上がりやすい状態にあるためです。
つまらない例えで申し訳ありませんが、半分に潰し切った短いストローで何かを飲むことを想像してみてください。彼らの鼻は常にそんな状態にあります。
食事
これも同様に立体的な構造を奪われていますから、非常に不器用なものになってしまっています。本来得られるべき食事の質とは、
- 快適に味を楽しめること。
- 充分に咀嚼すること。
- 散らかさないこと。
などになると思いますが、顔を潰されているとこれら全ての質が落ちてしまいます。顔から肛門までの消化器、呼吸器の一番手前に障害があるのは本当に気の毒なことです。
その他のリスク
呼吸器と消化器が直接的なリスクですが、それにより以下のような傾向が現れ安く注意が必要です。
- 肥満
- 睡眠不足
- 食道炎、嘔吐
- 特定の皮膚病
肥満これは、浅い呼吸を強いられるが故に本来の運動能力発揮させるほど酸素供給が得られない。
慢性的に鼻に詰まりがある状態なので、人間でいう睡眠時無呼吸に近い状態にある。
これらの短頭種は鼻から満足な呼吸が得られない為、強く吸い込むことでその奇形を補います。その結果喉、首、胸に強い負荷がかかり二次的な循環器疾患、消化器疾患を誘発しやすく、短頭種に食道炎や嘔吐が多いのはこの為です。
鼻が短い=骨量が少ないですが、それに対して皮膚や軟部組織は正常な量があり過剰です。多くの短頭種の顔が垂れ下がっているのはこの為で、この状態はまた皮膚のひだ病を引き起こします。
チェックポイント
全ての短頭種が多かれ少なかれBOASに苦しんでおり、BOASであるが為に肥満になりやすいのですが、同時に肥満はBOASを悪化させてしまう悪循環の中にいます。
もし以下のようなBOASと思われる症状が観られた場合、犬猫の体重が健康的なレベルにあるよう、十分注意が必要です。
- しばしば呼吸が浅くなる。
- 飛んだり跳ねたり遊びたい気持ちに身体がついていけていない。
- イビキをかく。
- 異常な体温。
- 外から見て鼻の穴が塞がっているように視える。
人間のエゴの恐ろしさ
犬の愛護団体Dogs Trustは、鼻の長く首のスリムな親から生まれた子を飼うようススメています。猫もまた同様でしょう。パグ、ブルドッグそしてエキゾチックな猫たちは、ニーズに応えて生産されてしまうわけですから、まず飼う側の意識の変革がなければ、デザインペットの苦しみ、悲しみはなくなりません。
人は何故、わざわざ奇形種を求めるのでしょうか。珍しい姿をしたペットを手元に置くことで、自分が注目されたい、あるいはそういう種類を創り出すことで称賛されたいという気持ちゆえでしょうか。。
しかし、そのエゴによって直接的な被害を受けるのは、罪のない動物たちであることを知れば、もうデザインペットの生産は終わりにしていい時代だとおもいます。
近い将来、潰れた顔のペットを求めるには規制が入るようなことも有り得そうですが、残念ながら、そういった点で日本はまさに後進国でありペットたちの悲劇以前に飼い主たちのエゴが優先されています。今日、無免許で犬猫を売買できる先進国は急速に減りつつあります。
コメント
[…] 犬猫のBOAS問題 […]
by ヨーガ・スートラから読み解く菜食主義 - アヒムサー 2019年12月19日 11:40 AM